教えて持田さん!
Column
博物館はなぜK/Pg境界を大事にするのか?
初めて新しいK/Pg境界を見たとき、「え? これ?」というのが率直な感想でした。以前から見慣れていた茂川流布川の地層と比べて、どこが境界なのか、見た目ではわからなかったのです。
それでも、この地層を残したいと思います。恐竜やアンモナイトが絶滅した前後の世界を、これからも研究者が調べられるようにするためです。
K/Pg境界は、約6600万年前の白亜紀と古第三紀の境目です。恐竜(生き残った一部がのちに鳥類へと進化)やアンモナイト(現代のイカやタコの祖先)などが絶滅した時期にあたります。だからといって、そこに誰でも見つけられる線が引かれているわけではありません。
東北大学の高嶋礼詩教授はじめ、研究グループの研究者たちは10年以上をかけて、周辺の地層を繰り返し調べてきました。岩石に残る昔の地磁気を調べる分析や、オスミウムという元素の同位体の比率を調べる分析などを重ね、境界の位置を絞り込んだのだそうです。現地を見て、その手間の大きさがよくわかりました。
もう一つ、気になったことがあります。地層が地表に出ている部分が、小さいのです。
地層が見えている場所を「露頭」といいますが、この露頭は土砂や倒木に覆われやすく、どう保全するかを考える必要があります。
研究者が詳しく調べるには、なにより露頭そのものが失われないよう、状態良く保存する必要があります。そして調査できる環境を保たなければなりません。
覆われた土砂をただ取り除けばよいとも限りません。大切な部分を傷めないよう、どこを、どのように整えるか。それが技術的に可能なのか?
また、たとえば天然記念物とか北海道遺産などに指定することで、保全対策がより具体化できるものか。指定すると、かえって研究者にとって扱いづらくはならないか?
この土地を所有・管理する北海道十勝総合振興局森林室の方々もまじえ、研究者と相談しながら、できる方策について今後考えていきます。
博物館で新しい発見を紹介することと、現地の地層を残すことは、どちらも必要です。展示を見て興味を持った方が、何年か先に研究を始めるかもしれません。そのときにも調べられる場所を残しておきたい。現地を見た私は、展示と一緒に、その先のことも考えています。